「文我さん、ネタについてのつぶやき」
《落語百席プログラムより》
=その10=
「たいこ腹」
私は10代から肩こりと付き合っています。そして今となれば、その日の肩のこり具合で体調がわかるぐらいになりました。喜んで良いのやら、悲しんで良いのやら・・・。何度か「針」を打ってもらったのですが、その時は良い塩梅なのですが、後に身体がだるくなってしまって、仕事に差し支えが出てきたので、この「針」の治療は諦めました。個人的に合う合わないはあるにしても、「針」というものは、確かに身体に効いてくるものだということを実感しました。しかし、これも専門医がやってこそで、素人が「針」を打ったら大変。先代鈴々舎馬風師は、後輩を見つけては、無理やり「針」を打ったのだそうです。その中に、若き日の立川談志師の姿もあったようです。
「能狂言」
この落語をはじめて知ったのは、昭和天皇の前で口演した6代目三遊亭円生師の速記本でした。何ともかとも不思議な噺で、こればかりはどうにもならないのではないか、と思っていたのですが、人間とは不思議なもので、ある日のこと、フッと自分なりのアイデアが見つかり、上方風に復活上演することが出来ました。その前に、3代目三遊亭円馬師の速記本を手に入れ、その演出から一つのヒントをもらったのも大きな要因です。私はこのネタを出来るだけ「コント風」に仕上げてみたいと思っています。しかし、現代の雰囲気のコントや、合理的に処理された落語に仕上げるのではなく、やはり、ホンワカした無駄も含んでいる、昔風のコントになれば幸せなのです。
「景清」
5年ほど前に、名古屋の中日劇場で行われた「米朝枝雀二人会」の楽屋で、米朝師とお話をさせていただいておりました時、不意に米朝師が「お前はんは景清は演ってるのか」と聞かれました。その時は、このネタを覚える気もありませんでしたから「まだです」とお答えしましたら、「そうか。まぁ、いずれ演るわな」と言われて、他の話に移りました。そんなことがあっても、別に演ってみようとは思いませんでしたが、これも「能狂言」同様、ある日のこと、猛然とこのネタへの思いが募り、最近では再々上演している演目の一つとなりました。できるだけアッサリと演りたいと思います。
落語百席Vol.18プログラムより