「文我さん、ネタについてのつぶやき」

    《落語百席プログラムより》

=その12=

「高尾」

このネタを始めて耳にしたのは、LPレコードでした。これは昭和46年にABCホールで行われた「1080分落語会」のライブ録音で、演者は現・春団治師です。そのころ私は中学生になりたてで、とにかく春団治師が好きで、春団治師のレコードを買い集めては聞いていた時期だけに、このレコードは大変嬉しいものでした。そして、このレコードを聞き終えた後の感想として、とにかく生の舞台を見てみたい、のみでした。それから年を経て、実際に春団治師よりこのネタを教わりましたが、春団治色に染め上がっているネタだけに、どのように個性を出していったらよいのやら、さっぱりということになったのです。とにかく何年か前から、またこのネタに挑戦して、少しはその糸口が見つかりかけたような気がしている昨今です。

「紺田屋」

私はこの手のネタが大好きです。怪異談であり、人情噺的な匂いがして、いろんな楽しみ方が出来る内容だからです。しかしこのネタを演じるものはほとんど有りません。確かに地味なネタですし、労多くして功少なしという感じのものだけに、食指が動きにくいのかもしれません。しかし、昔なら本当にこのようなことがあったのではないかと、とも思いますし、含まれています親子の情愛も、かなり上質の描き方になっていると思います。私のネタの中では、復活ものの一つですが、最近では夏場になると必ず舞台にかけるネタになってきました。今後も大事に練っていきたいと思いますし、是非、ご感想をお聞きしたいと存じます。

「武助芝居」

このネタの原本は、落語家のルーツである、300年前の江戸の噺家、鹿野武左衛門の作品です。ところがこのネタがもとで鹿野武左衛門は離れ島へ流され、数年後江戸へ戻ってきてからも、島の暮らしの疲れから、直ぐに亡くなるという、悲劇的な結末を迎えることになりました。このネタの馬がしゃべるということだけをヒントに、効きもしない薬を売っていた者の言い訳に、鹿野武左衛門が巻き込まれただけのことなのですが、とにかくこの人はこのネタにより大迷惑を被ったのです。しかし、その内容たるや、ナンセンスそのもの。どうぞ楽しくお聞きくださいますように。

落語百席Vol.20プログラムより

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