「文我さん、ネタについてのつぶやき」

    《落語百席プログラムより》

=その15=

「時うどん」

おそらく、落語の中では、一番有名なネタではないでしょうか。とにかくその演出は違っても、東京では「時そば」大阪では「時うどん」の名で、爆笑編として、上演数も抜群というネタだからです。落語芝居として、コント形式でも吉本系の劇場で、よく演じられたりしましたが、やはり、落語以上の面白さは出せず、わざとらしい、妙なコントとなっていた様に思います。それだけに、落語としてはよくできている逸品と言えますし、この面白さは普遍的なものと確信しています。好人物・企み・金銭・物真似など、人の興味を引くような事柄が散りばめられているネタだけに、いろんな楽しみ方で見ていただけましょう。私の滑稽落語の中でも、自分らしい味付けで楽しんで頂ける様になったネタだと思っています。

「月宮殿星の都」

昨年の秋がネタ下ろしで、今までに数回しか舞台にかけていないネタです。明治の半ばから大正にかけて、上方落語が東京へ大量に移植されましたが、このネタばかりは流石に食指が動かなかった様です。それだけに上方落語色が強く、アイデアのスケールがビッグであり、且つ開放的なネタと言えましょうか。東京では数年前にお亡くなりになりました、二代目桂小南師が時折舞台にかけ、レコードにも入れておられます。今まで恐ろしく古い形でしか残ってきていないこのネタを、少しでも新しい形にならないかと思い、構成いたしました。アイデアとしては「地獄八景亡者の戯れ」のノリでいければ、より面白いモノになるのではないかと考えています。昔話に現在のアイデアがのっているネタというつもりで、お付き合い頂ければ幸いです。

「寝床」

昭和54年、桂枝雀に入門いたしました私が、今日まで師匠の舞台を数多く見せていただきましたが、その中ですごい名演に出会ったと言えるのが、この「寝床」です。弟子がこのようなことを言うこと自体、おかしいのかもしれませんが、とにかくすごい舞台でした。それは入門してすぐの頃の、大阪リサイタルホールでの「豊竹咲太夫の会」のゲストとして出演の折り。そして、今一度はその後直ぐ、京都市民寄席での時です。とにかく、寄席が渦を巻いて笑っているという状態を初めて見たからです。その後もすごい「寝床」は数多くありましたが、入門語すぐにあの様な舞台を見せて頂けたことを幸せに思います。私も少しでもその舞台に近づけたらと、思いながら精進しているネタなのです。

落語百席Vol.23プログラムより

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