「文我さん、ネタについてのつぶやき」
《落語百席プログラムより》
=その3=
『京の茶漬』
このネタは、三代目桂文我の十八番でした。先代は(三代目桂文我)は、平成4年に59歳で没しましたが、最晩年もこのネタは好んで演じていましたし、おそらく先代のネタでの上演回数は、この「京の茶漬」が一番多かったことだろうと思います。そして先代の「京の茶漬」の味わいは、正にタイトル通りの、実にあっさりとした「お茶漬けの味」でした。しかし、その味わいの中には、やはりピリッとした隠し味がひそんでいましたから、あえて言えば、極上等の「ワサビ茶漬」と言えるのではないでしょうか。
さて、今宵の私の、つまり、先代譲りの「お茶漬け」は、どんな味の「お茶漬け」になりますものやら---
『こぶ弁慶』
明治から大正にかけて、大阪落語が大量に東京落語に移し替えられました。つまり、大阪のネタが東京に輸入されたのです。そして東京人に合うように直され、工夫がなされ、立派な東京落語の名作に仕上がっていったネタも多々有るのです。しかし、そんな時代にどうしても東京に持っていけなかったネタの代表選手がこの「こぶ弁慶」です。聞いて頂ければ納得して頂けることと思いますが、実に上方的で、おそらくこの面白さや、奇想天外さは東京人にはさっぱりわからなかったものと思われます。そして、平成の今日まで、誰もこのネタを東京落語に直して上演した人は無いようです、少なくとも私の知る限りは。上方落語の味が凝縮されているネタの一つです。
『さんま芝居』
このネタは、東京落語からの輸入バージョンです。このネタに出てきます芝居の「蔦紅葉宇都谷峠・文弥殺しの場」は、めったに上演されることのない、珍しい演し物です。怪談仕立ての芝居で、見ていても面白い演し物だと思うのですが、どういう訳か、あまり上演されません。さて、その芝居に秋の味覚の「さんま」が、どの様に絡んでいきますかは、聞いてのお楽しみ!どうです、あすのおかずは「さんま」になさいませんか。
文我百席vol.10プログラムより